歴史

Baby Comforter design - 1900

現在は乳首とマウスシールド(飲み込みよけ)と持ち手という形状が一般的になっているが、それ以前にも色々な形状のものがあった。おしゃぶりが現在のような形になったのは1900年ごろである。当時、乳首とマウスシールド(飲み込みよけ)と持ち手のデザインのものが初めて米国で "baby comforter" として商標登録された[1]。19世紀半ばの英国では、「ゴム製のリング」がやわらかい「歯固め(はがため)」として嬰児に与えられ、また哺乳瓶の乳首としても用いられていた[2]。1902年、Sears Roebuckは「新型のゴム歯固めリング、ひとつは固く、もうひとつはやわらかい乳首」という広告を出した。1909年、「おしゃぶりおばちゃん」("Auntie Pacifier")と自称する女性が「『おしゃぶり』として売られているゴム乳首をしゃぶらせ続けることが庶民階級で広く行われているが」これは「(歯の)健康に対する脅威」であるとする警告をニューヨークタイムズに投稿した[3]

イギリスでも、おしゃぶりは乳母を雇えない庶民階級が用いる不衛生なものと見られていた。1914年、ロンドンのある医者はおしゃぶりについて「床に落としても母親はブラウスかエプロンで軽く拭き、自分でなめただけで赤ん坊の口に戻している」とこぼしている[4]

初期のおしゃぶりは黒、茶または白のゴム製で、当時の白ゴムには微量の鉛が含まれていた。有名ブランドのひとつに Binki があり、 Binki は米国ではおしゃぶりの代名詞にもなった。おしゃぶりなど育児用品のブランドで、当初の1935年ごろはBinky と、末尾を yでつづっていた[5]

布製のおしゃぶり - 1506 アルブレヒト・デューラー

おしゃぶりは、固い端固めリングの延長であると同時に、19世紀アメリカで使われていた柔らかい乳首(sugar-tits, sugar-teats or sugar-rags [6])の代用品でもあった。ある著述家は"sugar-teat"は古いリネンの端切れにスプーン一杯の砂糖を栗未婚で周りを糸で固く縛り小さな球状にしたもの、と形容した[7]

北欧などでは食べ物を包みこんだ布も赤ん坊にあてがわれた。肉や脂身の塊を布に包んだもの、しばしばブランディーで湿らしたものが用いられる地方もあった。ドイツ語圏ではLutschbeutelといい、甘いパンやケシ粒のまわりにキレをまいたものが用いられることもあった。デューラーの聖母子像(1506年[8])では、赤ん坊の手に布製のおしゃぶりが見える[9]

1800年代、比喩ではなく文字通り「銀のスプーン」をくわえた赤ん坊が見られたー富裕階級の赤ん坊には、銀製の歯固めがしばしば与えられたのである。その他の貴重な材料、真珠やサンゴなども病を遠ざけると信じられて用いられることがあった。サンゴは全ての悪を遠ざけると信じられ[10]、17-19世紀イギリスでは、 a coral はサンゴ、象牙、骨などでできた歯固めを指した[11]。ある博物館の学芸員は、これらの材質は「共感呪術」("sympathetic magic"[12])として用いられ、動物の骨は赤ん坊が痛みに耐えられるような動物の力を象徴するのだ、とした。